第1話 堕ちたマネージャーたち編
「折れた翼」
そして女帝はついに、プレイヤーとって、もっとも難題である『プレーヤー側もマネージャーを実績で見抜かねばならない』について触れた。

所属はした。でもマネージャーが営業しない
「でも先生!『マネージャーにもピンキリある』なんて簡単に言いますが…僕たち新人にとっては、小さな仕事であってもそれは砂漠の中のオアシスです。マネージャーは全員神さまにしか見ませんよ」
「神さま…ね。そうでもないのよ、実際。”堕ちていったマネージャーたち”だって、たくさんみてきたわ…」
極細木は窓の外を見た。
「山ちゃんに事務所所属の友人や先輩がいたら、こんな話を聞いたことはないかしら?『所属はした。でもマネージャーが営業しない。現場も来ない。仕事がない。事務所を移籍したい』」
「あ、あります!」
いつも事務所にいるマネージャー
私の友人に、まさに同じことを言う者が、いた。
その友人は最初小さな事務所で育ち、いくつかの現場を経験した後、よりよい環境を求めて大手事務所に移籍、そして今に至るのだが…
運に恵まれず、本人としては不本意な小さな仕事をこなしている日々だ。
「…マネージャーが全然仕事していないらしいです。いつも事務所にいて…。これじゃ友人も怒りますよ」
うーん、と極細木は小さくうなったあと、ため息をつく。
じゃあ営業ってどういうもの?
「まあ、百戦錬磨のワタクシからすれば、どっちの意見も理解はできるんだけど。どこの事務所でも、必ずあるパターンよね。マネージャーとプレイヤーは両輪なのに、うまく噛み合わないで、お互い不幸になっていく…
そのプレイヤーが売れていない以上、マネージャーも決して許されるわけではないわよ。でもプレイヤー側が、無意識にマネージャーから情熱という名の翼をもいでしまうこともあるのかもしれない」
「プレイヤー側が?マネージャーは営業するのが仕事でしょう?仕事していないと批判して何が悪いんでしょうか」
「『営業営業』って、プレイヤーは二言目には営業を口にする。でも、じゃあ営業ってどういうもの?ときいて、きちんと答えられるプレイヤーに出会ったことがワタクシはないのよ」
営業をしたことのないプレイヤーが情熱を冷ましてしまう…
私は答えた。「そういえば…。なんとなくイメージで、会社回りをしてくれば仕事がとれるのかと…」
極細木は小さく首を振った。
「営業をしたことのないプレイヤーが、営業について無自覚に批判をして、マネージャーの情熱を冷ましてしまう…きっかけは、いつも些細なことなのかもしれないわね。でも『知らない』『自分にはできない』ってことへの、お互いの尊重がないと、こういった誤解はとけないんだと思う…」
わかったワ、と極細木は言った。
『どういう風にマネージャーが堕ちていくのか?』について話しましょ。これは、ワタクシの知り合いの話なんだけど…」
次回、極細木が語るマネージャーの姿とは?!
堕ちたマネージャーたち編『優しさの毒』乞うご期待!
極細木第2章「プロ向け編」もくじ
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極細木スガ子

ごくぼそきすがこ。
声業界の女帝と呼ばれるマネージャー。
山ちゃん

謎の新人ナレーター。
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