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ボイス・サーガ

 この物語は声優からナレーターを目指す迷走の物語である。おおむね事実。
 第18話

シンデレラボーイ快進撃

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第18話「シンデレラボーイ快進撃

 

安土(あづち)はひょんなことから声優事務所「どん底グルーヴ」に入る。そこでは唖然とするレッスンが繰り広げられていたのだが。

 

 

 

チャンスは不意打ちでやってくる

 
【どん底グルーヴ】に所属してから、なんの音沙汰もなく2ヶ月が過ぎた。
 
尼崎(あまがさき)社長からのレッスン勧誘ものらりくらりとかわしてきた。とりとめのない会話のなかで尼崎からこんな話が。
 
尼崎「某音響監督さんがワークショップやっているみたいだから、興味ある?」
安土「紹介していただけるんですか!!」
尼崎「いや、まあ、知り合いではないんだけどさー。試しに行ってみればー」
急いで自分で検索。調べるてみるとこの監督、有名アニメ作品を手がけているではないか!
 
これは行かねば!プロ声優向けワークショップで、素人はおらず、事務所所属かフリーになった声優達が来ていた。人数は6-7人の少人数で、いくつかクラスはあるようだ。レッスンは毎週違う題材を使いキャスティング。マイクを通して映像に声を当て録音。それを返しながら監督がダメを出して行く。かなり現場に近い内容。
 
ワークショプに通い始めて3ヶ月がたったある日。
 
監督「安土君、今度、僕が監督するアニメ。”主役”のオーディション受けてみる?」
安土「えっ!?はい!ぜひ受けさせてください!ぜひ、ぜひにー!」
やはり神様は味方してくれてる。アニメの主役!ああ、なんて素晴らしい初めての響き。スターとしてスポットライトが当たり、自分の姿が浮かび上がる。


”声優”安土の快進撃

 
当日、会場には有名声優さんたちが軒並みオーディションに来ていた。
 
安土「場違い?かも。。。」
急に不安が。やっぱりここでも胃が痛い。
 
スタジオに案内される。オーディション用なのでマイクが一本立っているだけだった。ガラス壁で仕切られた向こうの部屋にミキサー卓があり、監督はそこから指示を出す。
 
キューランプが赤く光る
 
安土『安土寿雄です。あはは、不思議だね、君と一緒いるとなんだか僕まで楽しいや』
監督「もう少し柔らかく喋ってみて」「ここは、もっと緊張感出して!」
色々とディレクションが入るが反応はイマイチである。
 
だがここで監督かもう一つの指示が
監督「急だけど、このセリフを試しに読んでもらえるかな?」
それは、主人公の友人で関西人のお調子者の役だった。
 
安土『アホやなー!そんなん気にしてたらなんもでけへんやん!』
監督「もっと、飄々と喋って!もっとくだけた感じで!」気のせいだろうかさっきよりディレクションに熱が入ってるように感じた。
監督「はい、オッケーです。お疲れ様でした」
後日、監督から封筒を渡された。中には「番組レギュラー合格」と書かれた紙がはいっていた。
監督「まずはここのポジション。”番レギ”を確実に取れるように。現場で色々勉強して」
 
【番組レギュラー通称番レギ】とは、単発で呼ばれるモブとは違い、レギュラーとして毎回呼ばれるモブの事。ここで気に入ってもらえれば、途中からちゃんとした役に起用される事も珍しくない。
 
奇跡だ。今まで辛い思いをしてきたオレについに奇跡が舞い降りたのだ。メインキャストは逃したけどまだチャンスは有る。それに、どんな形であれ初めての”アニメレギュラー”。これは大きな一歩だ!
 
それから数日後。「どん底グルーヴ」事務所で台本を受け取る。
 
尼崎社長「いやぁ、まさかこんなに早く決まるなんてさすがだね!僕も紹介した甲斐があったよ!ウッシッシ」
 
早速、香盤表(こうばんひょう。台本で役どころが書かれている部分)をチェック。
 
安土「えーっと僕の出番は、男A、男B、魔物A、魔物C、って、こんなに出番が!?」
今までは、モブで仕事に行ってもセリフが1つ2つ有る程度。あとはガヤの収録だった。だが今回は違う初回からいきなり4役!しかも主役と”会話”をしている!
ここからいよいよオレの時代がやってくる。安土の目に希望の光が灯った。
 
次回 アニメの現場