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ボイス・サーガ

 この物語は声優からナレーターを目指す迷走の物語である。おおむね事実。
 第28話

スカイウォーカーの夜明け(後編)

ボイス・サーガ

第28話「スカイウォーカーの夜明け(後編)

 

いきなりのスマッシュヒット。ビックスポンサーのCMが決まった逗子丸(ずしまる)だった

 

 

 

CMの現場

ここで少し時間を巻き戻してのCM収録現場。

ドッキドキでガクブルのCM収録当日。冬の寒さか、はたまた緊張からか、時折全身がブルブルっと震えるのを繰り返していた。これはホントに武者震いだもんね。

ピッカピカのスタジオではCM監督始め収録スタッフが、にこやかに迎えてくれた。
監督「やーやー今日はヨロシクお願いします。逗子丸さんの声で魂入れてくださいねー」
(なんだここはっ!声優の現場と違いすぎる!!!)
これまで経験してきた“声優の現場”では、制作スタッフはコンソールルームから滅多に出て来ず、いつもガラスの向こう側からスピーカーを通しての簡単な指示のみだった。ガヤとはそんな存在といえばそうなのだが。
(にこやかに歓待してくれる……普通のことなのに、なんだろ。今すごく嬉しい!)
スタッフ「お飲み物、何種類か用意してありますので、お好きなものをどーぞ!」
逗子丸「(なんと?!ここは竜宮城であったか!)あ、ドリンクはやっぱりヤッパリビールさん(クライアント)で統一されてるんですね」
スタッフ「お、さすがお目が高い!(謎)」
などと逗子丸のつまらないツッコミにすら、スタッフは上機嫌で対応してくれた。


グラビア撮影?

 
監督「はい、じゃあまず何パターンか録っていきましょーか!」
逗子丸「はい!お願いします!」
といっても原稿はペラ紙1枚に3行。

全国のビール党へ
今年も
スペシャル・ヤッパリ・フリー!

これを4、5回繰り返した後、
監督「じゃあ、3番目のパターンを活かして、そこから数パターンいきましょーか!」
逗子丸「お願いします!」
そこからは

プレイ/「いいですね、そんな感じ!」/プレイ/「ちょっと固くなったかな」/プレイ/「そうそう、もっとシャープな感じで」/プレイ/「トーンは上げずに」/プレイ/「そうです、もっと笑顔を!」/プレイ/「オッケー、頂きました。では違うパターンで」/プレイ/「もっと格好つけて」/プレイ/「笑顔、笑顔!」/プレイ/「張らなくっても大丈夫」/プレイ/……

(あれ?僕、今グラビアアイドルの写真撮影みたいじゃない?)
などと思いつつ、ノリノリで2時間近くをしゃべり倒した。たった3行の原稿なのだが。心地よい疲労感が全身を駆け抜ける。
『やり切った。ナレーションって、気ン持ちーぃぃ』

嬉しくてつい口ずさむ。「恋するフォーチュンクッキー」
未来はそんな悪くないよ/人生捨てたもんじゃないよね/あっと驚く奇跡が起きる
つま先から動き出す、止められない今の気持ちー!!

天空をスキップしながら帰路についた。スカイウォーカー。地に足がついてないって、こういうことを言うのだろうか。

この1本で、今まで声優で稼いだギャラの総計を、余裕で超えた。
次回  飛べ飛べパラグライダー!!