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ボイス・サーガ

 この物語は声優からナレーターを目指す迷走の物語である。おおむね事実。
 第30話

流星群

ボイス・サーガ

第30話「流星群」

 

調子に乗っていた逗子丸(ずしまる)だったが、いきなりの番組終了。再びの絶望の日々。

 

 

 

全て失ってゼロに

「渋カッコイイスポーツ」「二枚目ドキュメンタリー」「スピード感あるDJ系バラエティ」それに「声優を活かしたキャラナレ」。
『こんな逗子丸どうですか?こんなこともあんなことも出来ます!』
こねくり回した“自意識”を次々とボイスサンプルで形にしていった。しかしそれは大きな空振りを繰り返すだけだった。

「これじゃなかったの?強みは?特徴は?声って、読みって、なんだったっけ…?」
 
 次々と仕事を決めていくのは横須賀優男(よこすかやさお)を始めとする新人達。特急が停車駅をスッ飛ばしていく。全てを失った今は。ゼロだ。
 
 やがてボイスサンプル作りもおっくうになった。後輩達の華麗な活躍を時折SNSで知る。
ただ壊れたpepperくんのように、ただ無表情・無感情に長いため息をつくようになった。
逗子丸「はぁぁぁ、、、誰も僕のことを必要としてないんじゃないか」
 
人はだれしも高いところから落ちる方が痛みが強い。
ゆるやかに沼に沈んでいく。手も足も動かせない。声も枯れた。ただそれを受け入れるしかない感覚。 
 
その頃、猪鹿蝶ではゴッドマザー極細木(ごくぼそき)スガ子社長がある男と話していた。
極細木「そういえば逗子丸、もうダメかもネ。温かみのある声をもっと活かしなさいと言ってるのに、自意識過剰の二枚目ばかりやろうとするし。もうお手上げ。ヤル気も最近感じないし」
男 「ちょっと待って下さい。今は迷走してるだけで、きっと自分の道を見つけられるはずです!」
極細木「なら、アンタがなんとかしないとネ。じゃないと本当に終わちゃうワヨあの子」


舞い戻った彗星

 
自然公園にある小さな滝。逗子丸はいつもの発声練習場所で声も出さず、抜け殻のようにたたずんでいた。
かつては滝に挑むかのように大声を張り上げていた。今はそれももう必要なくなってしまったのだ。感傷で胸が痛む。そこにふらっと男が現れた。
「よぉ!逗子丸!きっとここだと思った」 
 
逗子丸「ほよ、ほよほよ!あれ、どうしたの?」
安土「新しく猪鹿蝶のマネージャーになった安土寿雄(あづちとしお)です!」
逗子丸「えぇーーー!!マネージャー!?」
声優という銀河を離れた彗星が、まさかの方向からナレーションの銀河に降ってきた。
逗子丸「あれから、どうしてたの?そしてなぜ?」
安土「まあ、勢いよく声優辞めたのは良かったけど。でもまあ、いろいろあるやん。いまは昔話は置いといて、未来の話しよーや。次のサンプルとか」 
逗子丸「サンプルね…壁にあたってると言うか、沼に沈んでる感じなんだよね、いま」
安土「CM見たよ。深夜番組も。ナレーションすごいやん。カッコつけずに、自分の良さを活かせたらもっと行けると思うんやけどなー。厚みのある柔らかい響きしてるんやから」
逗子丸「別に、カッコよくやってるつもりは無いんだけどなぁ、でも僕ってアレでしょ?ポジション的にはアンビリーバボーとかゲットスポーツの路線じゃないですか」 
安土「いやーいやいや、それ王道のカッコいい声やん!誰がそないな事言ったん?せやないって!勘違いもほどほどにせんと!」
逗子丸「そうかなぁ、それでCMの仕事決まったし」
安土「いつまで昔にしがみついてんねん!!そんなん、たまたま決まっただけやん!」
思わず語気を荒げる安土。果たして逗子丸は立ち上がれるのか!?
 
次回 いよいよ最終回!