ナレーター四本木典子

OL街道から一転ニートに没落!
出身は北陸、福井県。いまも故郷福井のことを愛して止まない。
そしてもうひとつ彼女が好きな物は鉄道。福井を通る特急雷鳥が大好きな、立派なオタク少女であった。鉄道グッズに囲まれている時が一番幸せだ。
そんな四本木は大学を出たあと順調に地元の銀行員になる。
「なんっでか、何度チェックしてもミスしちゃうんですよ!それがつらくてつらくて。好きでもない仕事で人間性を否定されるのはもう堪えられない、と(笑)で、同じミスをしてつらいのなら、せめて好きな仕事をしていたい!って」
親に黙って勝手に銀行を辞めたのであった。OL街道から一転ニートに没落!親のスネをかじりながら、ぶらぶら過ごす日々。
そんな彼女なのに、なぜだか芸能の女神が微笑んだ。
イベントリポーターや地域CM、広報ナレーションなど、地方での小さな声の仕事に巡り会うことができたのだ。
「いやぁいつでも時間が空いてるってのが強みだったんでしょうか(笑)それに銀行員時代、ほめられたのが電話の声だったんですよ!訛りが少ないって。まあこれしかほめられたことはなかったんですが(笑)」
順調に思える地方での活動。
しかし彼女の中ではむくむくと、東京でプロのナレーターになる夢がふくらんでいた。
上京して本格的にナレーションの勉強をしたい。進み始めた電車はそう簡単に止めることは出来なかった。
ホントにそんなに細かく気になってるの?!という感じ。
そしてスクールバーズ入学。最初のレッスンの講師は山上。
初日から四本木は完膚なきまでに打ちのめされたのだった。
『声が気持悪い。どっから声出してんの。表現はさも”◯◯っぽい”感じを作ってて、聴いてるとヒャィア~(全身をかきむしりつつ)ってなるんだけど?とにかく、全部まちがってる。はい次のひと』
と、すさまじい勢いでダメ出しをうけた。
「声や喋り方を否定されたことで、いままでやってきたこと全てを、否定されちゃった感じでした。本当にショック。自分が好きと思っている表現が、まさか不快とまで言われるなんて、思ってもいなかったですから(涙)」
他講師陣のレッスンでは、さらっとしたダメ出しを受けるだけ。
「”読めてればいいんじゃないの”くらいに思っていたので、他講師陣のかたのダメ出しも”!本当にそんなに細かく気になってるの?!”という感じ。いったい何が悪いのかも、分からなくなってました。それでもなんとか練習してたんですが、レッスン前夜はずーん、だったんです」
ずーん。胃も痛んだ。
地元で仕事をしていた時は、気ままにできる楽しさがあった。好きな仕事をしていたはずなのに。これでは銀行員だった時の日曜の夜と変わらない。
クラスでは「可もなく不可もなく」な存在。
その頃、立ち上がったキャスティングプロジェクト猪鹿蝶に自前のボイスサンプルを送ったが、声をかけられることはなかった。
力をのばしている同期生たちは、猪鹿蝶からチャンスをつかんでいく。
四本木が乗った運命の電車は停車したままだった。その隣を快速電車が次々と追い越していった。
趣味が”プロ視点”に変わっていった
「猪鹿蝶に落ちて、いまのままでは通用しないことを実感したんです。センスも含めて。心から変わろうと思った時でした」
スクールバーズ校長義村と話す機会があった。
自分の声のどこが変かということを問うてみた。
『今しゃべってる声は自然だよ。原稿を読む時に何かの別のスイッチが入ってるんだよ。いちどいろんな番組のコピーをしてみたら、分かるんじゃないかな』
勧められるままに「売れっ子のコピー」をはじめた。「これでいいんだろうか」と我にかえる一瞬もあった。
でも何度も繰り返し練習すると、ふと特徴をつかめる一瞬が来る。少しずつ手応えを掴み始めた。
「私が良い声と思ってた声が、”作ってる声”なんだなーと、ようやく気がついたというか。それからテレビの見方が変わりました」
「実際に売れている人”を注意深く聴いて『この喋り方は気持わるくないんだろうか』『私がやったらどうなるか』。今にして思えば”趣味視点”が”プロ視点”に変わっていったのかもしれません」
「小さな奇跡」もくじ
「小さな奇跡」 もくじ
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