あえて言う。このオンナは実在する。
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売れてもないのに
大手事務所3社を渡り歩いたオンナの世渡り哀歌

わらしべナレーター亀子の

明日はどっちだ

 第13話

おおきにの巻

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(2006年10月26日ナレーターメルマガ28号より)

 

あまりのチャンスに目がくらみ、いつもどおりのサブカル感性を表現してしまい、最大の後ろ盾スピーカ寺山のご機嫌をすっかりうしなうという人生最大のミステイクをおかした亀子。

最愛のユン様にソデにされ、所属事務所を解雇されてしまった。

まさに四面から楚歌が聞こえる絶体絶命崖っぷち!

寄る辺なき亀子は・・・一体どうなってしまうのであろうか?!

 
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音声合成の仕事をくれた旦那はん

 
◯謎配:いや~しかし、あの超人気顔出しDJのスピーカ寺山に嫌われちゃったのは本当に痛いですね。なにより店に居辛くなるのは…営業を封じられたようなものじゃありませんか。この状況を一体どうやって切り抜けたんですか?
 
●亀子:前々回のお話をおぼえてる?学術の研究用で、ギャラ1本100万円の音声合成VP…あの仕事をくれた旦那はんはね、その研究をわざわざ新聞に取材させるほど力のあるおひとでネ。デキる旦那はんやとは思ってたけど…ウチもここまですごい人やとは思うてなかった。
 
◯謎配:(記事の切り抜きを見せてもらいながら)ほんとだ、亀子さんへのインタビューが新聞に載ってる…
 
●亀子:スピーカはんのお店から声がかからんようになってからはホンマに生活がカツカツになってね、預金通帳も毎月マイナスで赤字で表示されるような状況やった。少ないギャラやのに未払いとかが重なったりして。世間はんは血も涙もおまへんェ…クレジットの引き落としが一日遅れたらすぐさま電話…携帯切って、電気も真っ暗にして布団に入って。月明かりが妙に明るくてネ…天井の木目が潮時って字に見えてしょうがなかったナ。「夢はなんですか?」ってきかれることがこの世で一番怖かった…
 
◯謎配:亀子さーん(;_;)…
 
●亀子:その頃にね、運よく100万のギャラが振り込まれたんヨ。
 


 

情熱のたき火に種火は残っているかい?

 
◯謎配:た、助かったんだ(`◇´)?!
 
●亀子:あと数日遅かったら、という所おした。…限度額いっぱいのはずの通帳を握りしめて泣いたナ…。それでウチ、旦那ハンに電話したン…どんな形でもいい、お礼をさせてくださいと。
 
◯謎配:ええ話やないですか…(;´д⊂)
 
●亀子:うっすら紅ひいてネ…。六本木でも着んかった精一杯のおしゃれして、赤坂のお寿司屋さんに旦はん来てもろたン。高級なお店でネ…精一杯背伸びしたけど、そのぶん美味しくて…。100万のギャラはどうしようかと迷ったけど、でもウチほとんど諦めかけてたし……都落ちにはお金かかりまへんもんネ。それで、これを思い出にしてもう踏ん切りをつけようと思ってた。夜更けまで旦那ハンと話したナ…ウチの趣味の話や、恋の話。不思議と仕事の話はしようとも思わんかった…ウチの中では最後のご挨拶みたいなもんやったし…
 
◯謎配:うんうん
 
●亀子:そうして久しぶりにお腹いっぱい食べて、お寿司屋さんを二人で出たン。そのお店の前には、大手ナレーション事務所の〈小金沢事務所ビル〉が建ってるンよね。
 
◯謎配:単発系の仕事を主に扱う小金沢ですね。たくさんのナレーターも所属しているけど、新人のために門戸を開いてるわけでもないから、昔はどうすれば所属できるかもわからない事務所でした。
 
●亀子:旦那はん、その小金沢事務所を横切りながらふと立ち止まってね、ウチの背中にこう呼びかけたんよ。『おカメ、きみの情熱のたき火に種火は残っているかい?』と。ウチびっくりして旦那を振り返った。すると旦はん…小金沢のビルを指差して言うたやおまへんか。『きみさえ良ければ、小金沢と話をつけたげよっか?』あまりの事にウチ、あっけにとられてたら『隠さなくてもいい。もう日々の生活にさえ困っているんだろう。もちろん甘やかすつもりじゃないからラストチャンスを提供するだけさ。小金沢にきみを拾ってもらえるよう、説得してみよう』と。
 


 

だから、手のうちようがない時ほど、あがきなさい

 
◯謎配:だ、旦はんが…?
 
●亀子:営業をするつもりはさらさらなかったから、変なプレッシャーをかけないよう、貧乏は隠してたつもり。なんで?ってきいたら『新品の服に、そのボロボロの靴は似合わないな』って。なんでそんなに良くしてくれるん?ともきいた。そしたら『今日みたいにしおらしくしてるきみもかわいかったけど、いつもの変なおカメも、ぼかぁ好きなんだ。どんな手を使ってでも冨城康男(とみじょうやすお)に会ってみせると言ってたろう?なら、こんなところでくじけてちゃだめだ。止まっちゃだめだ』と。
 
◯謎配:ええ話や……(;´д⊂)
 
●亀子:ウチ、旦はんの胸で…おおきに、おおきにって泣いた。そしたら旦はん、ウチの髪をなでながら『おカメの良い所はね、いつでも“飛びこんでいくこと”だよ。だから、手のうちようがない時ほど、あがきなさい』
 
◯謎配:それは大窓王がいつも言ってることと同じですね。【運勢とは字のごとく勢いだ。動きのあるところに運はついてまわる】と…まさに亀子さんは、あがいてる間に求心力を生んでるんですよね。どうしたらいいかわからないとき…家にいても進展はない、だから、傷ついても飛びだして行動していかなきゃ。
 
●亀子:旦ハン、その場で小金沢のマネージャーに電話をして、タクシーで帰っていったんおす…ウチ思うた、この巡り合わせは天がくれたチャンスやと。運命がウチに生きろ!というてるんやと思うたんヨ。
 
◯謎配:その旦那ハン、亀子さんが営業をしかけてたら、きっとそんな事してくれなかったんじゃないでしょうか…
 
●亀子:さあ…どうやろか…。
 

亀の目にも涙!
月を仰いで亀が涙するとき、星が雫に宿りけり!!

ナレーション馬鹿を貫くまっすぐな亀子の瞳に、男心を揺さぶられてしまったのかも知れぬ・・・たとえその二重まぶたが整形であっても!


次回!


もらった命とばかりに生まれ変わった亀子の前に、3人の男たちが登場することとなる・・・

人生を学べ亀子!新天地小金沢事務所で!
次週『天才ラッパー・キリーDの章』さあ人生のV字回復なるか?

 
 
 

- 登場人物 -

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亀子

売れてもないのに生き延びた女ナレーター。
あえて言う。
このオンナは実在する

ナレーター
謎配くん

 
インタビュアー。
赤坂中に現れる謎の配達人。


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