sideガンバルジャン

これまでのあらすじ
涙の養成所生活から、なんとかジュニアになったガンバルジャン。
勇気を振り絞って事務所にいけばマネージャーに迷惑がられ、その横柄な態度に怒っては「原因は私達ジュニアが事務所にぶらさがりたい気持ちにあったのか」と気づく日々。

ついにマネージャーからの電話が!
ジュニアにはなったものの何故かバイトまみれの惨めな日々。
真夜中一人のコンビニバイトでもやることなくぼーっとしては、余計なことばかり考えて過ごしていました。
あれ~『船底』からまったく抜け出ていない…ば、バラ色の生活はどこ?
しかし!
事務所からの電話を待ち続けること約半年・・・。
天は頑張るジャンするものを見捨てはしないジャンでした!
ついにマネージャーからの電話が鳴ったのでした!
ガヤはな、誰もが通った道なんだぞ
「あ〜ガンバルジャンくんかね?俺が仕事、決めといたから。OVAだ(オリジナルビデオアニメ=TVで流れないアニメ)。キミには『ガヤ』を任せようと思う。ガヤはな、ベテランから売れっ子まで誰もが必ず通ってきたんだぞ」
「ありがとうございます!頑張るジャンします!」
「うむ。だがそんなことより、だ。やるべきことは、わかっているだろうな」
「は、はい?」
ぴきーんっ!
待ちに待った仕事の電話が来て天にも昇る気持ちになるかと思いきや、台本すら受け取っていないのにもかかわらず、凄まじくも無意味な緊張が走りました。
ついに、来ました。
声の芸能の中でもいっとうガラパゴス的な文化形成を歩む「声優界」の通過儀礼。
理屈も常識もこえた信仰告白その名も「スタジオでのふるまい」のことでした。
その日の夕食では
その「スタジオでの振る舞い」についての詳細は、話だけは先輩から、なんとなく聞いていました。
『新人は誰よりも早くスタジオ入りし、誰よりも遅くスタジオから出なくてはいけない』
『新人は他の出演者やスタッフにお茶を淹れなくてはならない。もちろんその際の”順番”は最優先事項である』
『だからといってお茶を淹れたら、それはそれで「茶ぁいれてる暇があったら台本チェックしろや!」と先輩から説教2時間』
『売れっ子の○○は飲み会の席で、先輩用の魚の身を、ほぐしてから出すくらいの気遣いしてるぞ!』
時代や現場それぞれで、必ずしも上記のようなことが行われている訳ではありません。実際はほとんどないだろうと信じています
…が、当時の私たちにはそれはそれはまことしやかに語られていた都市伝説。
そして曲がったことや中途半端なことが嫌いな私は、その都市伝説をきくたび「んなもん関係あるか!声優の善し悪しは、プレイだけで決まるもんだ!」とうそぶいてきました。
そんな私だったのに…。
その日の夕食では、いぶかしがる母を尻目に、出された秋刀魚の身をほぐす練習をしていました。
ヒッキー

引きこもりから抜け出し、声優からナレーターになった男。現在ではドキュメンタリーや番組レギュラーナレーション、声優として大ヒット作に出演するなど、みごと社会復帰を果たした。
ガンバルジャン

夢にまで見た声優ジュニアは、まるで「レ・ミゼラブル(ああ無情)」な世界だった…。ナレーションを学ぶことで番組レギュラーをもち、社会復帰に至った、男泣きナレーター。
「声優ミゼラブル」 もくじ
最終幕 |
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第14幕 |
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第13幕 |
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第12幕 |
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第11幕 |
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第10幕 |
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第9幕 |
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第8幕 |
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第7幕 |
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第6幕 |
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第5幕 |
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第4幕 | |
第3幕 | |
第2幕 | |
第1幕 |