この物語はおおざっぱにフィクションです

ナレーターメルマガ

ボイス・サーガ

第1話
 

ナレーターメルマガ,声優からナレーターへ,ガンバルジャン
 

 

養成所に入る

ボイス・サーガ

第一話「養成所に入る」

(2019年2月14日ナレーターメルマガ358号より)

ついに始動ナレーター大河”ボイス・サーガ
この物語は声優からナレーターを目指す迷走の物語である。
売れっ子同士の戦いがあるように、売れてないもの同士にもまた戦いがある。果たして逗子丸は負の輪廻から脱出できるのか?

 
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声優養成所へ入る

「安定してない職業はダメ♡」と付き合ってるあかねちゃん。

逗子丸弘(ずしまるひろし)はあかねちゃんの言葉を疑うことなく、
 
ブラック不動産営業で5年。パワハラ当たり前、接待は強面のおじさまたちに軽く揉まれる。

日々のストレスを、せんべろ酒場でビールと共に流し込む日々。
(1000円でべろべろに酔えるような価格帯の酒場)

しかし!「やっぱりあなたとは先が見えないの、、、」の一言で突然あかねちゃんは去っていった。

パトラッシュ、僕もう、疲れたよ。。。魂が体から離れ、ネットをさまよっていた。
 
そんな時に目に止まったのがボイスサンプル。
 
声の豊かな表現に惹きつけられた。
 
なんとなーく、やってみたいなー。
 
でも自信もないしできるんだろうか?悶々

「そうだ声優養成所へ行こう!」

会社へ辞表をたたきつけ、門を叩いたのが、声優養成所【ラムチョップ】だった。
 
そこは厳しいことがネット雀の間で評判の新興の声優事務所。
 
これで右も左も分からない声の世界。遅すぎるスタートかも知れない。
 
箸にも棒にも引っかからないかも知れない
 
いやもしかしたら、もしかするかもしれない。
 
その可能性にかけてみよう。逗子丸弘(ずしまるひろし)の胸がときめいた。
 
27歳の春だった。
 


養成所初日


レッスン場には15名ほどの生徒。ライバルでもある学友たち。
 
いや、共に鍛錬していく同士といってもいいかも知れない。
 
サラリーマンの戦闘服スーツで意気揚々とレッスン場に乗り込んだ。
 
明らかな場違いに気づくのに時間はかからなかった。

男性陣はスタジオの隅っこにいた。
 
軽いノリで前髪ばかり気にしている関西人くん。
ソフトモヒカンのメガネくん。
ニキビ顔の10代大学1年生くん。
純朴さ100%の純(北の国から)くん。地味目だ。。。
 
女性陣に目を移すと、、、
 
キャリーケースの影薄子に地味っ子メガネ、全身黒のドクロマーク。
 
中央に陣取るのは赤や黄、紫、ピンク。蛍光色のニーハイ女子連隊。

中央に陣取り「カワイイ」連発できゃっきゃとはしゃいでいる。

思わず「毒虫色」と言いかけたがやめておいた。

「わー友達になれるかなーー」いや友達作りに来てるんではないと思いなおす。
 


 

黒山椒(くろざんしょ)社長登場


レッスン初日ということで、今日は社長の挨拶があるらしい。
 
普段は音響監督がレッスンを担当していて、社長が来るのはとても珍しいことだと情報通の蛍光タイツのニーハイピンクが教えてくれる。
 
一同緊張が走る。

受験の時に見かけた、神経質そうなメガネの男性がやってきた。

開口一番
「この養成所で彼氏彼女を作って楽しい1年を過ごそうなんて考えてるヤツは、金は返すから今すぐ辞めて出て行けー!」黒山椒社長のヒステリックな怒号が飛ぶ。
(えーーーーーーーっ!!!なぜにそこ?)

脳裏にうっすら浮かぶあかねちゃんの面影を、必死で黒く塗りつぶす。

初回のレッスンが厳かに始まった

「おいそのスーツの下手くそ!そんな芝居で仕事が取れるかッ!」

「他の邪魔になるから帰っていい!」

容赦ない罵声が飛び交う。
 
ひとしきり怒鳴ると社長はそそくさと稽古場を後にした。

逗子丸弘の声優養成所初日はそうやって終わった。
 

ボイス・サーガ

第2話「声優レッスンの裏側」

(2019年2月14日ナレーターメルマガ358号より)

ついに始動ナレーター大河”ボイス・サーガ
この物語は声優からナレーターを目指す迷走の物語である。
「彼氏彼女を作って楽しく過ごそうなんて考えてるヤツは、今すぐ辞めて出て行け!」たちに激震を残しての社長は早々に立ち去った。そして養成所のレッスンが始まった!

 
 

 

声優レッスンの裏側

そんなこんなで、声優養成所「ラムチョップ」のレッスンは始まった。

教材はウサギやオウム、アライグマにペンギン。可愛らしい動物たちが仲良くたわむれる幼児向けアニメーションのアフレコだ。逗子丸(ずしまる)の配役は決まってゴリラのガキ大将『ゴリポン』

「なんとか爪痕を残さないと。。。そうだ自主練をしよう!」はやる心で、掛け合いがあるツインテールのニーハイ・イエローにお誘いのメールを送ってみた。
 
逗子丸「どーも、ゴリラのゴリポンです!(笑)次のレッスン前に読み合わせしませんか?」

イエロー「いつアナタがゴリポン役に決定したんですか?仮のキャスティングですよね?勝手に勘違いしないでー!それに気安いメールはホント迷惑なんです!!もう、ホントやだ!」
 
逗子丸「え、いや、あなたの練習にもなるし...え、ダメ?」

なんかメッチャ詰問された。よく分からんテンションが恐い。
 
のっけからニーハイ・イエローから想定外のヘイトを買って重い気分になってしまった。

秘密のアドリブ


数週間後。アフレコ実習もこなれてきたころ。台本はバッチリ読み込んだ。セリフも様々な言い回しで練り込んだ。
 
逗子丸は気合いも新たに稽古場に一番乗りした。その日。
「おっはようございまぁーっす☆」

キラキラの甘い声で稽古場に入ってきたのは、いつもはレッスン間際にやってくるニーハイレッドだ。

大御所声優の朗読集団に在籍して、すでに声優としての活動実績もある。エリート生徒。レッスンでも主役(センターのうさぎちゃん)を任されることが多くなっていた。
 
逗子丸「あ、おはようございます。今日は早いんですね」

レッド「ひっどぉーぃ!今日はね、逗子丸きゅんのために早く来たんだよぉ☆ニャハッw」

逗子丸「え?どういうことですか?」

レッド「逗子丸きゅんとのシーン、事前に合わせたいなって思って。練習したいでしょ☆」
(イエローとのことを知っているのか?それでもいい。感激だ!)
逗子丸「あ、ありがとう!とっても助かるよ!!」
 
ニーハイレッドとのまさかの展開。最大のライバルは最強の仲間!少年マンガの王道に逗子丸の胸が高鳴る。

レッド「せっかくだから、背景シーンに2人でアドリブしちゃおっか☆」

逗子丸「えぇー!どんなこと?」

レッド「じゃあゴリポンが『お腹すいたなぁー』って言ったら、『”甘いもの”食べたいネ?』とか聞くネ」

逗子丸「それに答えればいいんだね、バナナとか」

レッド「そうそう☆ニャハッw」
 
黒山椒「いつまでチンタラやってんだ、時間を無駄にするな!」

そういって稽古場にやってきたのは黒山椒(くろざんしょ)社長。入ってくるなり説教。
 
どうやら今日は社長が抜き打ちでレッスンを観る日だ。しかも、マネージャーの三年坂(さんねんざか)女史も連れている。

千載一遇のチャンス。逗子丸、ガッツリ爪痕残します!

裏切りは女のアクセサリー


ニーハイレッドとの事前練習が効いたのか。
 
この日の逗子丸は冴えに冴えていた。
 
だって、いつもは「オマエ何しに来てるんだ」「どうしてそういう演技をするのか、その神経がわからない」など、心をえぐって、踏みつけて、ミキサーにかけて、下水に流す黒山椒社長からまだ罵声(ダメ出し)を頂いていないのだ。

逗子丸「(イケル!)」

次はいよいよ、練習した見せ場。ニーハイレッドのうさぎちゃんとのアドリブタイムだ。ここでキメルぜ!
 
ゴリポン「お腹すいたごり」

ウサギちゃん「なにか”熱っついもの”食べたいねー」

ゴリポン「バナーナッ!」

ウサギちゃん「えーーバナナはあったかくないよーあっははー☆(笑)」

ゴリポン「え?…あれ?あれ?」
 
黒山椒「ストップ!逗子丸、なにやってんだ!何があったかいバナナだ!」

逗子丸「え、あれ?おかしいな?”甘いもの”じゃ」

黒山椒「おかしいのはオマエの頭だ!アドリブならキッチリやれ!ど下手が勝手なことすんな!」

逗子丸「すっすみましぇん…」

黒山椒「ウサギはあのメチャクチャなアドリブにもちゃんと応えられたな。よしっ」

三年坂女史も逗子丸を冷くいちべつをくれた後、ニーハイレッドには、柔らかく微笑んでいる。

(ナ、ナンデーーー??)メンタルを一撃で撃ち抜かれた。
 
その後も3本のマイクに交互に入ってセリフを掛け合う。

逗子丸(ここでマイクに入るっ)ドンっ

影薄子「あ!痛っ」

マイクの取り合いで影薄子とぶつかってしまった。

黒山椒「カット!なにやってんだゴリラ!」

逗子丸「(小声で)影薄子さん、リハじゃあっちのマイクだったじゃない」

地味子「(小声で)だってニーハイレッドの動きがさっきと変わってて…」

逗子丸「えぇーっ!」

黒山椒「ゴリラ!うるさいぞ!邪魔するなら出て行け!」

逗子丸「いえ、マイクワークが変わって…」

黒山椒「臨機応変にするのが当たり前だろうが!」

逗子丸「すっすみましぇん…」

ニーハイレッド「ニャハッw」

まさか、ハメられたのか…声優界の底辺でのマウントの取り合いは始まっていた。
 
レッスン後、情報通の蛍光タイツのニーハイピンクが、こちらをチラチラ気にしながら声をひそめていた。
 
ニーハイピンク「マネージャーの三年坂女史の仕事で失敗すると、確実に3年は干されるってよ」

京都にある三年坂「転ぶと三年後に死ぬと言われる坂。よくても確実に3年寿命が縮まるらしい」
 
遥か遠くに見えていたはずのアルプスの頂は、一歩も登っていないのに、吹雪いて見えなくなっていた。
 

 
 
 
 

- 登場人物 -

逗子丸弘

愛する彼女に振られたきっかけから脱サラし声優へ、サラリーマンとはまた違う底辺同士のマウンティング合戦に振り回され迷走を続ける。

ボイス・サーガ

第1話

養成所へ入る

第2話

レッスンの裏側

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